"愛の渦"を見た

※多少、映画の内容について、
ネタばれあるかもしれません


過去のツイートが毎日反映されている設定になっていた。
なんだか恥ずかしい。


今日、何かと話題の映画、
"愛の渦"を見てきた。

JR新宿駅東口から徒歩3分くらいの所にある、
新宿武蔵野館
席は100も無いくらい。今まで見た中で一番小さい映画館。
の割にはポップコーンとかドリンクも充実していて、
田舎育ちの僕は、こんなことでも、都会だ!と思ってしまった。


愛の渦は、もう設定の時点からかなりインパクトがでかい。
"乱交パーティー"が舞台で、しかもR-18設定なのだから。
果たしてどんなキワモノ映画なのだろうかと。

まあでも出演している俳優が、
今注目している門脇麦ちゃんとか池松壮亮滝藤賢一などなど、
"まとも"な人たちばかりだったので、エロ一辺倒ではないんだろうなという安心感はあった。


開演10分前に、スクリーンの入り口にチケットを買った人が呼ばれる。
僕みたいに、一人で来ている男性もいれば、女の子1人、大学生のカップル、
女の子2人組、夫婦など、客層はそんなに偏っていない。

ただ、今から、"乱交パーティーを題材にした映画を見るんだぞ"という事に関して、
共犯感覚のような、
今から自分も乱交パーティーに参加するんじゃないかのような、
ドキドキとちょっとした興奮もあった。



六本木のとあるマンションに集まった男女8名。
それぞれが全く違う境遇と性格の持ち主。
ただ、共通していることは"セックスが好きで仕方ない"こと。


物語は池松君扮するフリーターが、親から仕送りされたなけなしの2万円を持って、
会場に向かうところから始まる。

そして、麦ちゃん扮する女子大生が、
田中哲司窪塚洋介扮する運営者に説明を受けている場面、

その次のシーンからはもう、みんなバスタオル1枚だ。
いままで面識のない参加者が、薄暗いロビーにバスタオル1枚で勢ぞろいし、
セックスが始まるまでの、気まずい空気感。

女の子の参加者が、
わかってもないのに話を合わせようとするOL
なにを話されても否定から入って心を開かない保育士
何を考えているかわからない常連
何も話さないけどだれよりもスケベな女子大生

男は、
アソコが大きい、ちゃらちゃらした30代のフリーター
真面目そうな外見で妻子持ち、神田の食品会社で働くサラリーマン
工場勤務のデブ童貞
何も話さないフリーター

この8人が、徐々に会話を始めるんだけれど、
もうセリフの一つひとつが、生々しくリアルだ。

どんな人なのか、距離感を測っている、探る感じ。
僕個人は、人付き合いで一番苦手な時間。(得意な人はいないと思うけれど)


それぞれの、臆病な自尊心と尊大な羞恥心がぶつかり合う。
ここが自分のなかで一番好きなシーンだ。


演出が、麦ちゃんのおっぱいが出るまでは、
他の女優のそれは一切うつさないところがニクイ。
というか、麦ちゃんが脱いだ時、映すんだ!と逆にびっくりした。


ここから、セックスを中心に物語が動いていく。

みんな"スケベである"ということがわかってからの開き直りが、
逆に、カップリングでのごたごたや、本音をつい言ってしまうことに繋がる。

人間、生きていれば、様々なしがらみや損得で、人間関係がこじれがちだけど、
どこのだれかも知らない人たちが、立場もなにもなく、共通の目的で集まっているのに、
こうもこじれてしまうなら、それはもう人間の習性なんだろうなぁと妙に納得してしまった。

途中、スワッピングを体験したいというカップルが表れるも、
やはり無理だと帰ってしまう。他の参加者で"変なカップルだったな!"と笑い合っているけれど、
ふつうの感覚からすれば、カップルの方が正常なわけで。

性欲にしたがって、そのほかの何もかもを捨てて、
セックスをしたい!と集まっている。
何が正常で、異常なのか。
愛し合っている人としかやってはいけない?
はたしてそうなのか?

答えを出すつもりはないけど、
答えが出ないその問をずーっと考えながら見ていた。


池松君扮するフリーターは、しょうもない人間だ。
どんなことを言って、どんな行動をするのかある程度予想して、
その通りになってしまうから余計に感情移入してしまう。

逆に、なんだよこいつと全く入り込めない人もいるだろうな。
別にそれでもいい。


麦ちゃん扮する女子大生とセックスをし、
同じような感情、表情を持つ彼女を図らずも好きになってしまった。
相手の事を自分が一番わかっているという錯覚をしてしまった。
本人は否定していたが、間違いなくそうだろう。
僕自身を重ねていた、というか自分そのものだからわかる。
この子に出会って、何かが変わるかもしれないという根拠のない期待と、
またセックスしたいという性欲が入り混じった状態。
そこに好きという感情が入ってしまうともう手の着けようがない。

30代のフリーターに「好きになってんじゃねえよ!」と一喝された時の、
心に杭を打たれた様な、自分自身認めたくなかったが、
やはり好きになってしまったのだ!と気付く瞬間。
思わず声を上げてやめろ!と言いたくなるくらい、
僕も心がぐわあっと動いたシーンだった。


閉店時間の5時になり、
バスタオルから私服に着替える。
テレビが付き、天気予報が流れ、
カーテンが開き、朝日が入ってくる。

皆ふだんの生活に戻る時間だ。


ラストシーンは、麦ちゃんが、池松君をファミレスに呼び出すところから始まる。
淡い期待を持って向かうけれど、
「発信履歴を消してください」というお願いだった。
帰る直前に麦ちゃんが携帯を無くして、
池松君の携帯を借りて探していたのだ。

そこに、かすかな希望を持っていただけに、まさかの一言で、現実に引き戻される。

「あれは本当の自分では無い」と女子大生は言う。
「あれも本当の自分じゃないかな」とフリーターは返す。未練タラタラだ。
男女の考え方の違いがこういうところではっきりと出てくる。

「いいですね…」と言い残して、女子大生は学校に向かう。

そして、またいつも通りの生活に戻っていく。

結局は、一晩セックスをしただけであって、
自分自身は何も変わってないことに気付いた様な、2人の表情で終わる。

本当の自分ってなんだろう、
そしてそれをさらけ出すことが正解なんだろうか。


久しぶりに映画を見たけど、
こんなに考えてしまうことになるとは思わなかった。

そしてこんなに内容を覚えていた自分にびっくりだ。


次見るやつは、特に何も考えず、
スカッとするようなやつが見たい。

以上です。

見てくれてありがとちゃん。